『LIFE IS』にまつわるあれこれ①
その知らせは突然だった。
ほんとうは朝が弱いので、休日は遅起きしたい。だから目がさめても起きあがるのがもったいなくてゴロゴロしている。そのうちにお子らは痺れをきらして階下におりていき、つかのま真空みたいな空白の時間がおとずれる。
その日は娘の誕生日で、お子らはことさら張りきっていた。収拾がつかなくなるのは時間の問題だった。その前に階下におりてピーチクパーチクうるさい口に食事をつっこまなくてはいけない。
わたしは枕に顔をうずめたままスマホを探った。無意識に指がTwitterをひらいた。
そこに記事があった。
表紙の写真、岡田敦さんによる撮影であること、北海道根室での撮影だったこと、発売日…。
ドンッと胸を押されたような衝撃があった。力が入らず小刻みに震える指先をみて、わぁこういう時ってほんとうに手が震えるんだ、と他人ごとみたいに思った。
助けを求めてTLにもどると、TLもブルブル震えていた。
ブリザードから生まれたばかりの雛を守るために密集するコウテイペンギンみたいに、安田くんの写真集発売という放たれたばかりのほやほやのニュースを、吹きあれる感情の大波からまもろうと寄りあつまっているみたいだった。
うれしい、だけじゃない。
こわさがあった。
ヒリつくような岡田さんの写真も、はじめて見る安田くんの表情も、かんたんにのみ込めずになんども記事を見返した。
そうしている間に、それまで安田くんから発せられたすんなり落ちていかない表現、ひっかかりのある微かなトゲみたいなものが、すべてここに集約されていくのを感じた。
時が巻きもどされ、どこにおくべきか解らないままだったパズルのピースがひとりでにあるべき場所をうめていった。
それは強力な磁場だった。
抗うすべはなかった。
わたしはそのままネット書店で予約を完了した。
階下からお子らのはしゃぐ声が聞こえていた。底ぬけの夏で、エアコンの設定温度を2度さげた。
それが8月14日の朝だった。